七つ屋志のぶ(気ままにブログ)

熊谷質店

質屋が主人公の漫画が登場しました

七つ屋志のぶ(2015/6/11)

つい最近、知人から聞いて知ったことなのですが、質屋が主人公の漫画があるんですね。しかも書いているのは有名な「のだめカンタービレ」の作者さんだといいます。いったいどんな漫画なのか、気になってしょうがないので(^^;)、さっそく本屋さんで買ってきてみました。正直、女性が書いた漫画というのは読んだことがなかったのですが、とても読みやすい絵で、内容も面白かったです。

タイトルは「七つ屋志のぶの宝石匣(ばこ)」。主人公は江戸時代から続く下町の質屋「倉田屋」の跡継ぎ娘の女子高生、志のぶ。この子は特殊な能力を持っていて、宝石の持っている「気」のようなものを感じ取ることができます。その宝石が天然(本物)であるか合成(偽物)であるかばかりでなく、その宝石を持ち込んだ人間の素性のようなものまで宝石から感じ取ることができます。

そこに出入りするのは近所に住む、老舗宝石店のイケメン・セールスマン、北上顕定。実は彼は、幼少期に倉田屋の先代(志のぶの祖父)に預けられた由緒正しい名門一族の末裔なのですが、そのまま身内が迎えに来ることはなく、倉田屋で育てられました。大人になった今でも自分のルーツを探している彼が唯一記憶しているのが、一族に伝わるという鳥の飛ぶ姿の内包物を持つ赤い宝石の話で、その宝石を追い求めて宝石関係の仕事に携わっているわけです。彼も宝石に対する知識が豊富で、自身で宝石の鑑定などもでき、ときどき倉田屋の店先に立って査定したりもしています(^^;)。

彼らを取り巻く色々な人々が宝石という共通項でつながり、様々なドラマが展開していく。そんな感じのお話でしょうか。宝石に関する話題がふんだんに盛り込まれているので、宝石好きな方にはとても楽しい作品だと思います。物語の設定がしっかりていて、内容も分かりやすいですから、宝石にそれほど詳しくない方でも十分楽しめると思います。とはいえ冒頭から、稀少宝石であるレッド・ベリルの結晶を質屋のおじいさんが目を輝かせながら見ているシーンがあったりとか、CVD合成ダイヤのガードルにレーザーでトライゴンを入れるなど、宝石に詳しい方でもなかなか分からないような、マニアックな記述も多々あります(^^;;)。

レッド・ベリル
《レッド・ベリルの結晶》
アメリカ・ユタ州の一鉱山(現在は閉山)のみでしか採掘されないため希少性が高い。
「ベリル」は鉱物名だが、他にエメラルドやアクワマリンなども同じ「ベリル」である。

トライゴン
《ダイヤモンドのトライゴン》
天然ダイヤの結晶面に時折現れる三角形の模様。
これは八面体結晶である天然ダイヤならではの特徴だが、漫画の中では
合成ダイヤにレーザーで偽のトライゴンを彫刻し、天然ダイヤに偽装する。

作者さんは、宝石の研究・教育機関であるGIAに通って宝石の勉強をされたそうです。自分も若い頃、目を輝かせながらGIAに通い、宝石の勉強をしていたことがあります。実際に我々の現場で漫画に出てくるような稀少宝石に遭遇することはそれほど多くはありませんが、わくわくさせるような宝石のエピソードは楽しいですね。

ちなみに、タイトルにもなっている「七つ屋」とは、江戸時代に使われていた質屋(しちや)を表す隠語だそうです。勉強になります(^^;;)。

漫画
《七つ屋志のぶの宝石匣》第1巻
講談社・KC KISSより好評発売中!