オリンピックの「記録」を担当する会社

熊谷質店

今回はオリンピック公式時計についてのお話です

オリンピック公式時計(2015/8/4)

東京オリンピック開催まであと5年。最近、新・国立競技場の建築費用の話ばかりが取りざたされていますが、オリンピックといえば、私などは公式時計はどこが担当するのか、どんなオリンピック限定モデルが出るのかなどが商売柄ちょっと気になってしまいます(^^;;)。

オリンピックの計時というと、何となく「オメガ」っていう感じがしますよね。選手がゴールした瞬間に計測タイムとオメガの文字がぱっと画面に表示される、そんな印象がとってもあります(^^;;)。実際どうなのでしょうか。夏、冬ともにこれまでのオリンピックについて調べてみました。

開催年開催地メーカー
11896アテネロンジン
21900パリ
31904セントルイス
41908ロンドン
51912ストックホルム
71920アントワープホイヤー
81924パリホイヤー
91928アムステルダムホイヤー
101932ロサンゼルスオメガ
111936ベルリンオメガ
141948ロンドンオメガ
151952ヘルシンキオメガ
161956メルボルンオメガ
171960ローマオメガ
181964東京セイコー
191968メキシコシティーオメガ
201972ミュンヘンロンジン/ユングハンス
211976モントリオールスイスタイミング
221980モスクワスイスタイミング/ホイヤー
231984ロサンゼルススイスタイミング
241988ソウルスイスタイミング
251992バルセロナセイコー
261996アトランタスウォッチ
272000シドニースウォッチ
282004アテネスウォッチ
292008北京オメガ
302012ロンドンオメガ

※第6、12、13回大会は戦争のため、開催されていません。

ちなみに冬のオリンピックは、

開催年開催地メーカー
11924シャモニー
21928サンモリッツ
31932レークプラシッド
41936ガルミッシュ・パルテンキルヒェンオメガ
51948サンモリッツオメガ
61952オスロロンジン
71956コルティナ・ダンペッツォオメガ
81960スコーバレーロンジン
91964インスブルックオメガ
101968グルノーブルオメガ
111972札幌セイコー
121976インスブルックスイスタイミング
131980レークプラシッドスイスタイミング
141984サラエボオメガ
151988カルガリーオメガ
161992アルベールビルオメガ
171994リレハンメルセイコー
181998長野セイコー
192002ソルトレークセイコー
202006トリノオメガ
212010バンクーバーオメガ
222014ソチオメガ

やはりオメガが圧倒的に多いようですね。スイスタイミング社というあまり聞きなれない会社名がありますが、これは1972年にオメガとロンジンが共同で設立した会社で、競技会の計時を専門に行っています。現在はオメガの子会社となっておりますが、そもそもオメガやロンジン自体が現在ではスウォッチ・グループの傘下となっておりますから、スウォッチ・グループ以外でオリンピックの計時を単独で行っているのはセイコー、ホイヤーしかありません。スイス以外でいえばセイコーしかありませんから、セイコーの国際的な評価の高さがうかがえますね。

オメガとセイコーといえば、有名なエピソードがあります。1964年、まだメイド・イン・ジャパンが安かろう悪かろうと言われた時代、セイコー(当時の第二精工舎)はスイスのニューシャテルで行われる「天文台コンクール」という時計の精度を競う権威ある大会に初めて参加します。この大会では、毎年上位陣はオメガ、ロンジン、ゼニスなどのスイスの有名時計メーカー(ロレックス、IWCなどは不参加)が競い合っていて、その筆頭にいたのがオメガでした。当時、世界最高峰を誇るスイスの時計メーカーの技術と日本の技術とでは大きく差がありましたから、セイコーの初めての挑戦は100位以下という惨敗を喫する結果に終わりました。

しかし、そこからがセイコーのすごいところで、短期間で研究・開発を進め、1年後には早くも6位、そしてわずか3年後の1967年にはとうとう2位にまで上り詰めました。この時の1位がオメガであり、セイコーは翌年こそ1位を獲得すべく準備を進めていくわけですが、ニューシャテル天文台コンクールは何とこの年を持って突如中止となりました。その理由は、正確無比を誇るクォーツ式時計の登場により、機械式時計も含めて精度を競うコンクールを開催する意味合いが薄れたというのが表向きの理由ですが、実際にはスイスの時計界がセイコーに負けるのをおそれて大会自体をなくしてしまったともいわれております。

それから、40年以上が経つわけですが、精度が問われるオリンピックなどのスポーツ計時の分野でもやはりオメガ、セイコーは活躍してきたわけですね。最近では圧倒的にオメガが強い状況になっているわけですが、2020年にはオリンピックが久しぶりに日本で開催されます。過去、夏・冬あわせて日本で行われた3度のオリンピックでは常にセイコーが計時を担当しております。これは久しぶりに「SEIKO」の表示がモニターに映し出されるのかなあと思いきや、、、なんと、2020年もオメガが公式時計を担当します。というのも開催地が決まるずっと前にIOCとオメガとの間で契約が結ばれており、2020年まではオメガが担当することがすでに決定済みだったのです。

なんだかちょっと残念な感じがしますが(^^;;)、しばらく前から競泳などでよく見られるようになった、選手の動きに合わせて動いていく世界記録のライン(Virtual record line)など、オメガが手がけるスポーツ計時のシステム、映像化の技術はますます洗練されていくように思います。東京オリンピックの計時はオメガに任せるとして、自国で行われるスポーツの祭典をまずは無事成功させ、楽しみたいものですね。

トウキョウ
2020年、東京開催は決まったものの・・・(^^;;)