パラジウムの乱

熊谷質店

地金相場の値動きちょっと変だぞ?

パラジウムの乱 (2018/3/12)

毎年、年の初めに、今年の金相場がどうなるのかを勝手に予想してブログを書いてきましたが、なんだかバタバタしていて、すっかり3月になってしまいました(^^;;)。遅ればせながら、そして僭越ながら今年の展望をまた書いてみたいと思います。

去年の年初の記事では、トランプ大統領の政策が地金相場にかなり影響しそうだと書きましたが、今年はそれに加えてなんといっても北朝鮮情勢が影響してくると思います。もっとも去年の後半からはそのような情勢が続いていたわけですが、先日、トランプ大統領と金総書記との米朝首脳会談が5月までに行われるという大きなニュースが飛び込んできました。北朝鮮の問題が平和的に解決される道が開けるかどうかで、金相場には動きが出てくるかもしれませんね。何にせよ平和的に解決されることを期待するのみですが。

ここのところ、株価が乱高下したり、仮想通貨が問題を起こしたりしている中、金相場は比較的堅調に値動きしております。アメリカの金利上昇のペースアップが確実視される中でも相場が大きく下がらないというのは、これまでの金相場の推移からするとちょっと特殊な感じがしますよね。やはり今のようなご時世の中で、現物資産としての金の存在というものには大きな意味があるわけで、相場的には今年もこのまま高値水準が続きそうな感じがします。

一方のプラチナ相場ですが、こちらの方は今年も苦戦が続きそうですね。株価が上がり、原油相場も一時よりはだいぶ高い値段に戻してきているのに、プラチナはある意味頑なまでに相場が上がってきませんね(^^;)。やはり背景に世界の実体経済があまりよくないということがあるのではないでしょうか。プラチナの相場に影響を与えるといわれるヨーロッパ経済も、イギリスのEU離脱の本格化や各EU加盟国内での保護主義の台頭などで先の見通しがあまりよくありません。プラチナは金と違って、需要の半分以上が工業用途となっておりますから、この辺がよくなってこない限り相場上昇が見込めません。ただし同じプラチナ族のロジウムやパラジウムの相場は高いですから、これ以上の下落もないような感じがします。結局のところ今ぐらいのレンジで上がったり下がったりしながらある程度の相場を維持してくのではないでしょうか。

さて、今回の表題ともなっているパラジウムについてですが、こちらが昨年来異常に値上がりしております。パラジウムは工業用途ではプラチナ同様、自動車の排ガス浄化装置の触媒として利用されております。主にプラチナはディーゼル、パラジウムはガソリン車に利用されているようですね。ディーゼル車が多く走っているヨーロッパの経済とプラチナの価格が連動している理由もここにあるわけですね。

また、パラジウムは宝飾用の用途としても重要な役割を果たしております。金やプラチナの割金(わりがね)として用いられるからです。例えばプラチナのネックレスの場合、たいていPt850という品質のプラチナを用います。これは85%がプラチナで残りの15%は他の金属が使われていることを意味しております。これが割金ですね。こうすることで、貴金属としての加工性や耐久性を上げることができますし、コストダウンを図ることもできるわけです。従来プラチナ製品の割金や18金のホワイトゴールド用の割金としてパラジウムが重宝されてきました。

では、そのパラジウムの価格の推移をグラフで見てみましょう。

パラジウム価格推移 プラチナ価格推移
上・パラジウム価格推移 下・プラチナ価格推移

上がパラジウム、下がプラチナの値段の推移です。1オンス(31.1g)あたりのドル建ての価格になっています。1年前には200ドル以上プラチナの方が高かったのですが、右肩上がりに値を上げ、昨年9月にプラチナが急落したタイミングで一気に抜き去ってしまいました。ここ最近は少し値下りしておりますが、依然としてプラチナよりも高い値段で取引されております。

これは貴金属業界にとっては異常な事態ですよね。割金の方が主となる金属よりも高くなってしまっているわけですから。つまり、パラジウムで割ったPt850のネックレスを作る方が純プラチナのネックレスを作るよりもコストがかかってしまうということですからおかしな話です。まさに脇役が主役を食ってしまっている状況でありパラジウムの乱といってもいい状況ですよね。もっとも、今の価格ではパラジウムを割金に多く使うことは難しいと思いますから、他の物を多く混ぜてコストダウンを図っているとは思われますが、それにしてもプラチナが安くなっているにも関わらず、プラチナ製品自体はそれほど安くならない原因の一端はここにあると思います。この状況はいつまで続くのでしょうか。金とプラチナの価格が逆転してから久しくなりますが、こちらも当分この状況は続いていくのでしょうか。何かプラチナの価値がますます落ちているような気がして少し寂しいですね。