今回はダイヤの値段についてのお話です
金やプラチナの値段が毎日相場変動があるのは皆様ご存知の通りです。変動はあるものの、売り買いの基準となる純金や純プラチナのインゴッド価格が、きちんと公開されているので安心して取引できますし、その品物の現時点での価値というものを一般の人が簡単に知ることが出来ます。
これが宝石となると大変難しい話で、その品物の実際の相場というものを一般の方が知ることはなかなかできないと思います。というのも宝石には、品質というものがあり、相場というものを簡単に数値化できないからです。金やプラチナのように重さだけで値段を決めることができません。同じ大きさ(重さ)でも品質の良し悪しで値段には雲泥の差があります。売られている値段もまちまちですし、セールや値引きなどで売り値も大きく変わったりします。
でも、実はダイヤの場合、大々的に発表されているわけではありませんが、相場の指標となるような世界的にきちんと決まった卸値というものがあるのです。
そもそもダイヤモンドの値段については、南アフリカ地域で大きな鉱山を持つデビアス社の影響力が極めて大きいです。最近になってロシアやその他の地域でダイヤモンドが産出するようになって、デビアスを通さないで流通するダイヤも多くなってきているようですが、デビアス社は、過去には世界で流通するダイヤの多くを独占的に取り扱ってきた巨大なシンジケートです。デビアス社が世界中のダイヤ需要に応じて生産量を調整するなどしてきたため、ダイヤの値段は他の宝石と違い、世界中で安定した高い値段が保たれてきたわけです。
色石と違い、ダイヤモンドの場合、良し悪し(グレード)を決める基準というものが国際的に確立されているということもその背景にはあります。
そのデビアス社が毎月発行しているダイヤの卸価格の値段表というものがあります。これは「ラパポート・レポート」と呼ばれるもので、ダイヤの大きさ、品質ごとに1ct換算の価格(ガイと呼ばれる)が表になって示されています。
このラパポート・レポートは会費さえ払えば、誰でも入手することができるものです。ここで表示されている値段は、実際の卸値よりは少し高く表示されていますが、相場を見る上では非常に有用で、ダイヤの卸屋さんは皆この表を持っています。
われわれがお客さまのダイヤを査定するときにも、鑑定書がないものは、実際に石を見てダイヤのグレードを割り出し、そこから1ct換算の値段を決め、そこに実際のキャラット数を掛け合わせて値段を出します。その際には、英語で表記されたラパポート・レポートを直接用いるわけではなく、我々の取引先でもあるダイヤの卸業者の相場表や、我々中古業界の最近の市場相場などを独自にデータ化したものを用いて値段を算出します。もっともこれらの値段の大本になっているのがこのラパポート・レポートであるわけです。
ラパポート・レポートがドル建てで書いてあることからも分かるように、ドル対円の為替相場も値段に影響してきます。普通は、円安の方が値段が上がることになります。
最近の潮流としては、例えば立爪ダイヤとして一番多い0.3ct台などの石については、とっぴんクラスのものの値段はやや下がり、品質の悪いものの値段はやや上がり、結果として品質による値段の差が以前よりは少なくなってきた感じがします。現在の世界的な需要というのが、品質が良すぎる小さい石を選ぶよりも大きさを優先する傾向があるためです。そういった消費者の需要の変化もダイヤの値段に影響を与える一因になっています。