今回はその中でも一大勢力を持つ3つのグループについてのお話です
現在、世界には数え切れない数の時計メーカーがありますが、その中で、圧倒的に大きな勢力をもつ3つの巨大なグループがあることをご存知でしょうか。今回は時計界の3つの大きなグループついての話題です。
以下、これらのグループに所属する代表的なブランドを表にしてみます。(これで全てではありません。他にも所属するブランドがあります)
リシュモン・グループ | LVMHグループ | スウォッチ・グループ |
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それぞれのグループに、そうそうたるメンバーが所属しているのが分かると思います。
宝飾ブランドとして名高いカルティエ、ヴァンクリーフ&アーペルをはじめ、それに宝飾時計の代名詞ともいえるピアジェ、ムーブメント製造メーカーとしても歴史が深いジャガー・ルクルト、若者に人気のIWC、パネライなどを加え、さらには時計業界頂上ブランドの1つとして君臨するヴァシュロン・コンスタンタンも名を連ねるなど、豪華ですきのないメンバー構成です。
通常多くの時計ブランドは、毎年3月~4月頃、スイスのバーゼルで行われる見本市でその年の新作などを発表するのが通例ですが、リシュモン・グループはそれよりも先にスイスのジュネーブでジュネーブ・サロンという独自の見本市を開きます。バーゼルよりも参加数が少ないわけですが、これだけのメンバーが揃っているので十分見ごたえのあるものになります。
カルティエ / ピアジェ
ルイ・ヴィトン・モエ・ヘネシーの略字を取ったグループです。ヘネシーとはあのブランデーで有名なヘネシーです。ちなみにドンペリなども傘下に入っているようです。
なんといってもブランド力が高いヴィトンを筆頭に多くのファッション・ブランドが名を連ねます(ここには書いていないブランドも多いです)。さらに、多くのお酒ブランドなどが傘下にあり、圧倒的な資本力を持ちます。
その他、時計・宝飾関連としては、宝飾部門代表としてブルガリ(2年前に買収)、伝説のムーブメントを開発したゼニス、スポーツ系時計の分野で人気を誇るホイヤーなどを擁します。それとここには書いていませんがあのダイヤモンドのデビアス社とも提携しているようです。
ルイ・ヴィトン / ブルガリ
なんといってもスウォッチを作っているグループですから、世界最大の時計製造グループとなっています。ここの一番の武器はエタ(ETA)社が傘下に入っていることです。ETA社は時計ブランドではありませんが、世界第一の腕時計ムーブメント製造メーカーです。
これまで、多くの腕時計メーカーがETA社から安くて性能のよい未完成品のムーブメントを購入し、そのパーツに自社で仕上げ、調整を施し、これを自社製ムーブメントとして腕時計に搭載し販売してきました。その方が、自社でムーブメントを一から開発・設計をするよりも断然コストを安くあげることができるためです。(もちろん完全自社製のムーブメントを採用しているメーカーも多いです)
ところが、2010年以降は、ETA社はスウォッチ・グループ以外への未完成ムーブメントの提供を原則禁止としたため、スウォッチ・グループ以外のメーカーはその対応に迫られました。これは2010年問題として当時時計業界でも大きな話題になっていました。
現在、自社開発のムーブメントを搭載した時計が増えてきているのはこの影響にもよります。自社開発ムーブメントが増えるのは時計界にとっていいことなのですが、その開発料を上乗せして定価が高くなりすぎてしまっているメーカーもあるのは残念なことです。
従来通り、ETA社から安定したムーブメントの供給を受けられるスウォッチ・グループは、その点では当面の優位性はあるといえるでしょう。
2007年銀座に完成した本社ビル、ニコラス・G・ハイエック センターにはスウォッチ・グループの各時計メーカーの販売ブースが勢揃いしていて、大変見ごたえがあります。
ニコラス・G・ハイエックセンター / ETA社製ムーブメント
今年1月にアメリカの高級宝飾ブランド、ハリー・ウィンストンをスウォッチ・グループが買収することが発表されました。スウォッチ・グループは圧倒的な時計の製造量を誇っていたわけですが、上の表を見ると分かるように、他のグループと違い、有名宝飾ブランドが入っておりませんでした。ハリー・ウィンストンは待望の高級宝飾ブランドとなりますから、その分野においての力が強化され、シェアを伸ばしていくことが予想されます。買収の金額は10億ドル(当時の為替レートで約900億円)とも言われており、スウォッチ・グループの力の大きさをうかがい知ることができます。
ハリー・ウィンストン
ロレックスやパテック、フランク・ミュラー、ブライトリングなどなど。上記の3グループに入っていない一流時計メーカーはまだまだ数多くあるわけですが、上記3グループの資本力は巨大で、時計業界においての影響力も大きいため、その動向からは今後も目が離せません。