鑑別機関では「鑑別書」または「鑑定書」を発行しています
宝石を買うと付いてくる、その宝石に対する「鑑別書」や「鑑定書」。これらを発行しているのが宝石の鑑別機関です。
現在、宝石の鑑別、鑑定を専門に行っている鑑別機関は、国内に100社以上あるといわれています。その中でもっとも多くの鑑別機関が集まるのが東京・御徒町です。御徒町は宝石卸の店、小売店もずらりと軒を並べており、おそらく日本一といえる宝石の町です。
東京、御徒町。宝石関係の店がずらりと軒を連ねる。
鑑別機関は、宝石メーカーや卸、小売店とは、まったく独立した組織となっています。利害関係が絡まない、第三者である鑑別機関が発行する証明書であるので、信用性が保てるというわけです。
さて、数多くある鑑別機関ですが、鑑別書の記載方法、石の評価基準等が、各機関でばらばらになってしまうと、消費者を混乱させることになってしまいます。また、石に対して行われる化学的な処理や、石そのものを作ってしまう合成石の技術などは日々進歩しており、それらの表記の仕方等も常に技術の進歩にあわせて変えていかなければなりません。
そのため、現在、大手の鑑別機関が集まってAGL(宝石鑑別団体協議会)という組織が作られております。ここで鑑別書の記載方法の統一や、新しい技術が出てきた場合の対応などが話し合われております。
AGLの会員は2013年4月現在で、21社あります。ダイヤモンドのグレーディングにおいて国内標準となっている中央宝石研究所(通称、中宝研)や、世界的な権威をもつGIA(米国宝石学会)が直営しているAGTなど、国内を代表する鑑別機関が名を連ねます。
中古宝石市場で数多くの品物を見ていると、時々、ちょっと首をかしげるような鑑別書や鑑定書を見かけることがあります。もちろんAGLに加盟しているような機関が発行したものではなく、なんだか大手の名前をパクったようなあやしい名前がついた機関のものが多いです。もし鑑別機関が特定の業者と組んで結果を捏造してしまうようなことがあれば、大変なことになってしまいます。(もちろん意図的に行われれば詐欺罪を問われることになると思いますが)
ですから、鑑別書や鑑定書を見るときには、それを発行している機関が信用のおける機関かどうかということも考える必要があります。ですから、宝石屋さんで鑑別書付きの品物を買うときには、鑑別機関についての説明は受けた方がよいと思います。鑑別書や鑑定書が付いているから絶対に安心ということにはなりません。
現在のところ、ダイヤの鑑定書ならば中央宝石研究所のものが宝石卸や我々の業界では標準的に利用されているため、査定が高くなりやすいです。ダイヤのグレーディングの場合、非常に微妙なグレードの差異を判定しているため、鑑別機関やその時期によって若干差が出る場合があるからです。
色石の鑑別書については、かつては全国宝石学協会のものが最も信頼されておりましたが、現在ではこちらの鑑別機関自体がなくなってしまいましたので、やはり中央宝石研究所やAGTなどAGL加盟の大手機関が発行しているものの方が信頼性は高いといえるでしょう。
(もちろん、それ以外の鑑別機関のものであってもたいていは問題ないのですが、現実的に我々が取引する際には、どうしても評価に差が出ることがあります。)
ダイヤの鑑定書(中央宝石研究所)
鑑別機関に直接品物を持ち込めば、個人でも鑑別書や鑑定書を作ってもらえます。ただし、ダイヤの鑑定書を作る際には、石のグレードを正しく評価するため、必ずルース(裸石)にする必要があります。枠に入っている状態ではできません(ダイヤであるということを証明するだけの鑑別書なら可能です)。費用は品物にもよりますが、大体5,000円くらいでしょうか。
すでに鑑別書がない古い宝石類をお持ちの方など、興味のある方は一度試してみるのもよいかもしれません。