今回はその秘密に迫ります
高級腕時計の風防(時計表面のガラスの部分)としてなくてはならない素材となっているサファイア・クリスタル。サファイア・クリスタルとは一体どういうものなのでしょうか。
サファイア・クリスタルとはその名の通りサファイアで作られています。サファイアというと青い色を想像される方が多いかと思いますが、サファイアの色は実に様々です。というのも、サファイアというのはコランダムという鉱物の宝石品質のもの全般に用いられます。コランダムには、無色から、赤や黄色、緑、青、黒、無い色はないというぐらいのカラー・バリエーションがあります。その中で青いものが単に「サファイア」といわれているもので、赤だとルビー、それ以外のものは、グリーン・サファイアといったように、色+サファイアの名前で呼ばれています。サファイア・クリスタルとして使われているものは無色のコランダムでこれが宝石として使われれば、ホワイト・サファイアとなるわけです。
では、サファイア・クリスタルが宝石的価値があるかといえば、そうではないです。サファイア・クリスタルとして使われているのは天然素材ではなく、工場で人工的に作られた合成の結晶です。ですから天然で採掘するようなコストはかからないわけですが、それでも欠陥のない理想的なクリスタルを作り、それを加工するのですから(加工は硬度が高い分、難しくなります)、通常のガラス(ミネラル・クリスタル)などと比べればはるかに高いコストがかかります。
左・合成サファイア結晶 / 右・天然サファイア結晶
サファイア・クリスタルを時計の風防に使う最大のメリットは耐久性です。サファイアの硬度は9で、これはダイヤに次ぐ高さです。通常のガラス(ミネラル・クリスタル)は硬度7程度ですから、傷に対する耐久性は格段に違います。ですから、サファイア・クリスタルは、通常の使用ではあまり傷が付きません。ミネラル・クリスタルの場合は、砂埃に含まれる成分と同等の硬度しかないわけですから、どうしても使っている間に少しずつ傷が付きます。
もう1つのメリットは、視認性の高さかと思います。ミネラル・クリスタルに比べると、サファイア・クリスタルの方が透明度が高く、完全な無色に近いため、ガラスが厚くなっても文字盤がすっきりと見えます。たとえば、ミネラル・クリスタルのダイバーズ時計などを斜めから見ると、ガラスが分厚いですから、曇ったように見えてしまいます。さらに、普段気にならないミネラル・クリスタルの特徴でもある薄緑の色が感じられるようにもなったりして、視認性がだいぶ落ちてしまいます。これがサファイア・クリスタルを用いると(その質にもよりますが)、ある程度角度を変えても、くっきりと文字盤が見えます。
商売柄、コピーの時計などを見かけることもちょくちょくありますが、サファイア・クリスタルを使っていないものなどは、視認性の違いですぐに分かりますね。
ということで、時計を買うならサファイア・クリスタルの時計をお勧めします。といっても、いわゆる高級時計の世界では、現在ではほとんどのモデルにサファイア・クリスタルが採用されていますので、それらを買う場合にはあまり気にする必要もないかもしれません。定価が5万円以上でちゃんとしたメーカーの時計であればたいていサファイア・クリスタルを使っているでしょう。(ガガ・ミラノのようにミネラル・クリスタルを使うメーカーも一部ありますが。)
最後に「本当の」サファイア・クリスタルの時計を紹介します。下の写真の時計がそうです。どうでしょう、この時計はケース、文字盤まですべてサファイア・クリスタルで作られております。透明度の高いサファイア・クリスタルのケースを通して、時計内部の機械の様子が細部まで確認できます。手巻きのトゥールビヨンですから、機械も美しいでしょうね。この時計を作っているリシャール・ミルというメーカーは2001年に誕生したばかりのまだ新しいメーカーですが、最近雑誌などで取り上げられていますね。世界のセレブや一流アスリートなどが顧客にいるようです。ちなみに下の時計の価格は、世界限定5本で、¥164,850,000です(億越え^^;;;)。
リシャール・ミル RM 56-01