夏になると欲しくなるダイバーズウォッチ

熊谷質店

今回はダイバーズ・ウォッチについてのお話です

第21回 ダイバーズ・ウォッチ

南東北もようやく梅雨明けとなり、いよいよ本格的な夏が到来です。この季節になると、いつにもましてダイバーズ・ウォッチが目に付くようになりますよね。今回は夏の時計、ダイバーズ・ウォッチについてのお話です。

水深と気圧と防水性能

一般的にダイバーズ・ウォッチというと、単に防水性が高い時計を指しているようなイメージがあります。実際、ダイバーズ・ウォッチを購入するときに、本当にダイビングする目的で購入する人はそれほど多くはないでしょう。

時計の防水性能は、例えば、「○○m防水」や「○気圧防水」などのように水の深さもしくは気圧で表現されます。一般に水中では、10m潜るごとに1気圧ずつ圧力が掛かりますから、10気圧防水=100m防水と考えられている場合が多いです。では両者の防水性能は本当に同じなのでしょうか。実はそうではありません。

「10気圧防水」といった場合には、水深100m相当の圧力に耐えられるというだけで、実際に水深100mでの使用が想定されているわけではありません。もしこの時計をじゃぷんと海に沈めれば100mまで行かないうちにおそらく水が浸透することでしょう。時計が海に沈んでいく間、時計は潮に流されたり回転したりするわけですから、水圧以上の圧力が掛かってきます。ましてや、水深100mでダイバーがもし何か作業するとすれば、時計はたちまち壊れてしまうかもしれません。

これが「100m防水」といった場合には、実際に水深100mで時計を使用することが想定されておりますから、より堅牢な作りになっています。

実は、JISの規格では、防水に関して時計の種類を以下の5種類に分けて考えています。

防水性能は下に行くほど低くなっていきます。「飽和潜水時計」は簡単に言うと、深海で作業するプロの潜水士が使用するのにも耐えられる時計です。「空気潜水時計」はスキューバ・ダイビングなどのように空気を背負ってダイビングする人の用途に耐えられる時計です。この二つは潜水時計という名のとおりで、潜水する目的用に作られており、英語式にいえば「ダイバーズ・ウォッチ」というわけです。ダイバーズ・ウォッチの場合には防水性能を水深(m)で表します

残りの3つに関しては、あくまで日常生活用に作られたものです。日常生活用であり潜るわけではありませんから、防水性能を水深ではなく、気圧で表します。「日常生活用強化防水時計」のくくりには、5気圧から20気圧までの防水時計があります。その下の「日常生活用防水時計」では、2、3気圧程度の防水機能となっています。もちろん、2、30m潜れるわけではありません(^^;;)。雨に触れたりとか、顔を洗ったりするとかの日常生活に耐えられる最低限の防水性能ですから、水仕事などをするときなどには外さなければなりません。現在ではあまりありませんが、「非防水時計」になると、もう水にまったく触れないように気をつける必要があります。

必要とされる防水性能

では、具体的にどの程度の防水性能があれば、海やプールなどで使用できるのか気になるところです。

JISの規格によれば、「5気圧防水」以上の防水性能であれば、プールでの水泳やマリンスポーツなどで使用可能と記述してあります(ただし、水圧の激しいシャワーや水道水が直接時計にあたらないよう注意する記述もあり^^;)。さらに「10気圧防水」以上であれば、海での潜水も素潜り程度であれば使用することができる記述にもなっています。

ですが、一般的な考え方から行くと、プールでの使用であっても10気圧防水以上、海での使用を考えるのであれば、塩水に対する耐久性の問題もありますし、ダイバーズ・ウォッチでないと不安かと思います。

次の写真はいずれもカシオのG-Shockですが、左は20気圧防水のパイロット用のシリーズ、右が200m防水のダイビング用のシリーズです。いずれも高い防水性能を誇りますが、海で使うのであればやはりダイビング用のシリーズが欲しいところです。

G-shock  G-shock
カシオ G-shock
(左)スカイ・コックピット / (右)フロッグマン

ちなみに、たとえダイバーズ・ウォッチであっても、お風呂や温泉での使用は控えた方が賢明です。高温は時計内部の機械にとってもよくないですし、防水性能を維持するためのパッキンなども損傷する可能性があります。

ダイバーズ・ウォッチ独自の機能

ダイバーズ・ウォッチ(潜水時計)は、単に防水性能に優れているだけではありません。ダイバーズ・ウォッチならではの機能を持つものが多いです。

ダイバーズ・ウォッチ(潜水時計)についての記述が、ISOの規格の中にあります。その中でダイバーズ・ウォッチは、

という、記述があります。一応最低100m防水を条件としているようですが、水圧に関する規定もあるので、現在のダイバーズ・ウォッチはおおむね150m以上の防水となっていることが多いようです。その他、要求事項として、次に挙げる項目の記載があります。これに応えるべく、ダイバーズ・ウォッチには防水性以外にも特有の機能が備えられております(次の→部分)。

※先の例で登場したG-shockのフロッグマンはデジタル時計なので、こういった機能が分かりづらいのですが、例えば潜水時間を計る機能などがちゃんと付いております。

世界のダイバーズ・ウォッチ

すっかり、前置きが長くなってしまいました(^^;;)。では、この夏人気の高いダイバーズ・ウォッチを見ていきましょう!

OMEGA BREITLING
(左)オメガ シーマスター・アクアテラ クォーツ (定価 ¥259,200)
(右)ブライトリング スーパー・オーシャン42 (定価 ¥367,200)

オメガのダイバーズ・ウォッチといえば、シーマスター。その中でも一番シンプルで、値段も比較的リーズナブルなのがこちら、クォーツのアクアテラです(左上)。150m防水ですが、オメガの原点を感じさせる針の形状とデザインには機能美が感じられます。

右側の時計は、パイロット・ウォッチで有名なブライトリング製のダイバーズ・ウォッチ、スーパーオーシャン42。こちらはヘリウムエスケープバルブ搭載の本格仕様で1,500m防水を誇ります。自動巻きクロノメーターの機械を搭載していながら価格も抑えてあり、お得感の高いモデルになっております。

PANERAI ROLEX
(左)パネライ ルミノール・マリーナ 44mm PAM00299(定価 ¥896,400)
(右)ロレックス シードゥエラー 4000 REF:116600(定価 ¥1,026,000)

続いてはイタリア系時計ブランド、パネライの定番時計ルミノール・マリーナ。パネライ独自のケース形状、竜頭ガードは海にとてもよく似合いますね。300m防水ですから、ダイビングなどでも安心の性能ですね。

そして、真打・ロレックスの登場です。今年発売されたばかりの新型シードゥエラー 4000。4000というセカンドネームが付いていますが、4000m防水ではありません(^^;)。前作と同じで4000ft防水です。とはいえメートルに直しても1,220m防水ということですから、飽和潜水にも耐えられる性能です。ベゼルや文字盤のデザインは先に登場しているサブマリーナなどと同じものに切り替わり、ゴージャス感がさらに増した印象です。これでロレックスのダイバーズウォッチは全て新型に切り替わったことになります。しかし、税込み定価がついに100万越えとなってしまいました(^^;;)

AP PATEK
(左)オーデマ・ピゲ ロイヤルオーク オフショア・ダイバーズ(参考定価 ¥1,890,000)
(右)パテック・フィリップ アクアノート 5167/1A-001(定価 ¥2,397,600)

ラストはスイス頂上ブランドといわれる2社の時計です。左はオーデマ・ピゲのダイバーズ・ウォッチ。ピゲのシンボル、ロイヤル・オークのデザインを踏襲しながらスポーティな仕上がりになっております。300m防水ですが、それ以上の防水性がありそうながっちりとしたデザインですね。

右の時計は、腕時計界の大御所、パテック・フィリップのダイバーズ・ウォッチ、アクアノートです。これまたパテックのシンボルともいえるノーチラスのデザインを踏襲しています。裏スケ仕様ですので、防水性能は控えめな120mですが、裏側から時計内部の美しい機械を見ることができます。写真のモデルはケース径が40mmほどあり、アクア・ノートとしては大きめのもので、とても人気の高いモデルです。

ただし、この価格帯の時計になると、怖くて海では付けられないかもしれませんね(^^;;)。逆回転防止ベゼルなどもありませんし、もはやダイバーズ・ウォッチの域を超えた存在といえるかもしれません。